ナイトインザウッズ 今夜は森で自分語り
クリアしました!
ナイトインザウッズは、アメリカのゲーム会社が作ったインディーズのアドベンチャーゲーム。
http://publishing.playism.jp/nitw
詳しくはリンク踏んでくれ。
なんか色々と思うことがあったので、記録しておこうと思います。
主人公みたいにね。
ジョジョ好きなので、それに例えて言うなら……
「大学を中退した杜王町生まれ杜王町育ちの空条徐倫が杜王町に帰ってきて、色々と下品な台詞と悪態をつきながら、悪友と共に街に平和を取り戻すゲーム」
です。
4部好きな人は楽しめると思う。
スタンドバトルはないけど、5部でのペースで進む4部って感じ。
日常が少しずつ侵食されていって、ある日突然クライマックス。そして未来へ……とべこんちぬえど。そんなゲーム。
「人は皆運命の奴隷なのだ。そして彼らが、眠れる奴隷であるよう願っている。」
そんな台詞がありましたが、このゲームもまさにそんな感じ。
主人公たちは自らの未来を切り開いた眠れる奴隷だったんです。たとえその未来に想像を絶する苦痛が待ち受けていたとしても、彼らは「進む」ことを選んだ……的な。
咀嚼すればするほど深読み(?)してしまうんですよ。
舞台となる街は「ポッサム・スプリングス」(なんか既にスタンド名っぽいな)、かつて石灰の産出地として繁栄した田舎街です。
たぶん、この街の行方不明者の数は全国平均の8倍って数字くらいだと思う。(これについては後ほど)
主人公の名前は「メイ」。可愛い女の子だよ。過去に同級生を(一方的な)喧嘩で滅多打ちにし、病院送りにした経歴を持つ。
ゲーム開始後すぐに、拘置所にぶち込まれかけた。嫌いなものはポリ公。
悪友のグレッグ、その彼氏のアンガス、クールで知的なビー。
そんな彼らが踊る日常。
というゲーム。
(以ネタバレありで進んでいきます)
・主人公について
祖父を亡くした主人公メイは、精神的な疲弊から大学を中退して故郷へ戻ってくる。
もうこの時点で「うわああぁあっ」って感じ。
世間じゃよくある話かもしれないけど、本人からすればもう、ボロボロのボロ。
私には彼女の喪失感というか、世間から切り離された感覚がよく分かった。
だって私も似たような立場だから。
だからスタートからすぐに、病気からくる精神的なキツさ、周囲(両親や友達)に言いづらい症状と現状、必死に取り繕う世間体なんかが痛いくらい分かった。
それでもメイには悪友が3人もいる!
毎日遊んでくれて、バカやって、時には叱ってくれたり、寄り添ってくれたりする、サイコーなフレンズ。
客観的立場だから、メイの友達がサイコーのフレンズだってことがわかるけど、
きっと私がメイなら(もしかしたらもうメイなのかも)、街で起こる殺人事件に一緒に立ち向かってくれるまで、サイコーなフレンズが居ることに気づけないと思う。
もし、私にも一緒に事件に立ち向かってくれるサイコーなフレンズがいたら名乗り出て欲しい。
ゲームをプレイしていると、本当にいろいろな人がいる。セルマーという友達は、離婚にドラッグに投獄……ありとあらゆる経験をしてたり、1日置きくらいに屋根の上で望遠鏡を覗く先生がいたり、フラっといなくなった浮浪者がいたり……。
で、メイもまたその中の一人なんだよね。
このゲームには本当にいろんな人が出てくるけど、同性愛者とかも本当平然と出てくる。
そういうところはアメリカ製ゲームっぽいけど、あまりにも自然に出てくる。そういうところ好き。
で、もしかしてメイって女の子が好きなんじゃないかな……と思わせるところがあって。
お母さんとの会話で「妊娠の可能性がある経験などない」という台詞があったり、パーティで出会った女の子を「すっげー可愛い子いた!でも連絡先聞くの忘れた。チクショー!」というやりとりがあったり。
ただ、「アンガスのケツは最高だ」とも言っていたので、実際のところは不明。
メイの特筆すべきは、崩壊した彼女のモラルだろうとも思う。
ゲーム中、平気で万引きを4回くらいするし、親友のビーにも万引きをしろと言うし(後に商品は返した)、登るなという電線にヒョイヒョイ登るし、破壊活動なんて通常茶飯事。悪友のグレッグとは「犯罪バンザイ」と声を掛け合うほど。狂ってやがる。
そんなアウトローな生き方も、ゲームでしか体験できないものということで、割り切れる人はプレイしてみてほしい。
・メイのサイコーなフレンズについて
お前ら本当……最高だよ!!!!!!!!
ゲーム終盤の格好良さったらない。マジで。
ビーの優しさと理解に惚れる。グレッグの勇気と友情に胸が熱くなる。アンガスの知恵と冷静さに何度も励まされる。
メイにないものを彼らは持っている。彼らにないものはメイが持っている。
時にはそれで衝突したり(これがまあキツいんだな)、持たざる者同士で肩を寄せ合ったりする。
お気づきかと思うが、グレッグとアンガスは立派なゲイカップルである。
革ジャンを着こなすアウトローと現実主義の優しい男の幸せな2人なのだ。
グレッグは陽気で、何の悩みもないような振る舞いをするメイのようなアウトローだけど、メイとはまた違う問題を抱えている。
端的に言えば、ありもしない不安で死にそうなタイプ。
アンガスがいなくなったらどうしよう。俺みたいな奴は「いい人すぎる」アンガスには釣り合わないんじゃないか?俺って全然いい奴じゃないし。でもアンガスがいなくなったら俺は……。
わかりすぎるぜグレッグ!!!!!!!!!
俺もお前と同じだ!!!!!
グレッグの不安は俺の不安なんだ!!!
グレッグは俺なんだよおおおおおお!!!!
……とまあ、不安障害マンは思うんです。
本当に、グレッグの考え方はそのまま私の考え方と重なったんですね。
私にアンガスのような最高のケツを持った恋人はいないけど(笑)
グレッグとメイのやりとりの中に、「自分の彼氏を友達が性的な目で見てるってなんか複雑だな」という台詞があるんですが、この台詞のリアルさが好きです。
メイが見てたのはケツだけであって、そのほかの部分はどーでも良かったわけだけど。
一方アンガスは、家族からの暴力から逃れてグレッグと出会った男。
彼はグレッグなしには生きられないし、逆も然りである。
そんな経験から、アンガスはめちゃくちゃ現実主義。幽霊や超能力はもちろん、神様すら信じちゃあいない。
ゲーム終盤で街に潜むカルト集団のおっさん共を生き埋めにしてしまった時も、「(生き埋め以外の)他の選択肢があったとしても、僕はそうしたね」とコメントする冷静っぷり。もはや冷酷とも言えそう。すごいぜ。
運命とか必然とかに振り回されない、時には冷酷で残忍な選択であっても、正しいと思えばスデに行動が終わっている……そんな風に思った。
この時に見せた残酷さというか、スッパリと人を殺める選択を取れてしまうところは、彼が虐待を生き抜いたことに起因している……のかもしれない。
とにかく彼は「いい奴」だ。
傷ついたメイを背負って殺人集団から逃げてくれるくらいに!
末永く幸せに暮らせ!お前たち!!
そして腐れ縁の親友ビー。
ちっちゃい頃はビービーと呼んでいたそうな。
ビーは母親を病気で亡くしてからというもの、父親のノイローゼと資金不足により高卒で家業を継がなければいけなかったキャラクターでした。
重い。
重すぎる。
そしてビーはあったはずの大学生活を夢見ては、現実に絶望しながら働いている。
そこへ大学を蹴ったメイが来たもんだから、ああ、地雷の踏み合い。
本当にビーとメイのやり取りはキツいの極み。もうやめて!こっちのライフは0よ!って言いたくなったことが何度もある。
そんなメンタルの殴り合いを経て、ビーとメイはズッ友を超えた相棒となるんですよね。
今回はノスタルジーあるメイとビーの昔話が聴きたくて、ずっとビーと遊んでいました(笑)
だってグレッグにはアンガスがいるじゃん。
ハロウィンの夜だって2人でホラー映画見ながらお家デートしやがって。絶対昨夜はお楽しみだったじゃんお前ら!もう!!メイの入る隙はないわ!!
というわけでビーに迷惑をかけまくった。
一緒に地下室に閉じ込められたり、思い出のショッピングモールで大暴れしたり、ハナにつく奴らの集まるパーティに行ったり、いろいろしました。
ビーはメイに対してすごくキツい物言いをする事があるけど、ゲームが終わった後にはそのキツい物言いが恋しくなっちゃうほど。
メイとビーがガールスカウトに所属していたって話も、最高に可愛い。
何より、メイが1人で怪しい教団の祭壇(?)へ向かった時には、ビーが車を全速力で出してくれたに違いない。
暗い坑道の中では禁煙中のビーがくわえるダミーのタバコの灯りが操作の頼りだったし、何よりもあのシーンでみんなが来てくれたのがマジでよかった。
良すぎて語るのは難しいので、ぜひプレイしてほしい。
やっぱいざという時(物理)に駆けつけてくれる友達っていいなあ!!
・街に潜む影について
かつてポッサム・スプリングスは大いに盛り上がっていた街だった。しかし現在では、なーんにもない田舎に成り果て、街としての限界を待つばかり。
そして、この街には闇がある。
街に闇があるのなら、俺の心にゃ闇がある。心の闇。こころのやみ……
踊ろうヤギ!!!!!!!!!!!!
いや待って待って待って!
ヤギ!ヤギなの!!!闇でヤギなの!!!!
お願い話を聞いて!!!?!?!?
このポッサム・スプリングスには「黒いヤギ」と呼ばれる闇が存在するってハナシ。
この「黒いヤギ」が実在するのか、地下からの幻覚症状が出るガスによる集団幻覚なのかは不明だけど、とにかくこの街には「黒いヤギ」がいる。とするカルト教団が巣食っている。
この黒ヤギ教団(今命名)は、坑道にぽっかり空いたちょうど人1人くらいが落とせそうな穴に、街の中で役に立たない人間を落として、街の繁栄を守っていた(教団曰く)。
黒いヤギに人間を与えないと、街には不幸が降りかかるというパターン。あるあるだ。
黒ヤギ教団のいう黒いヤギは、人々の弱さにつけ込んで人を寄越せと催促するらしい。
メイの見ていた悪夢や、なんかよく分からん神的なものはこの黒いヤギのせいだったようだ。
街のために働きもせず親孝行もしない人間を喰わせてるんだ。何が悪い?というのが教団の言い分だ。
が、彼らは2つのミスをおかした。
1つは、落っことした腕をメイらに見つけられたこと。
もう1つは、友達想いのサイコーなフレンズを持つ人間をヤギに喰わせたこと。
メイらの友人ケイシーは、この教団によってヤギに喰われていた。
おそらく、協会の裏にいた浮浪者のブルースも……。
あと、諦めの悪いメンバーが居たことも失敗だな。あいつのせいで教団が生き埋めになったと言っても過言じゃあない。
怖いのは黒いヤギなんかじゃあなく、この黒ヤギ教団のメンバーがメイを知っていたことだと思う。
「クソッ!」の一言で、声の主がメイだと分かった。
教団メンバー、めちゃくちゃ近くにいるじゃん。
これが怖い。
脳裏でメイと話したいろんな人がよぎる。
もしかして先生?お隣さん?それともモールで水を浴びせた通行人?まさか、お父さん……?
ぶっちゃけみんな怪しくて、マジで怖い。
あ、お父さんは違いました。ごめんねパパ。
クリア後も誰が教団メンバーだったのかは一切の不明。怖い。
本人らは「街を守りたいオッさんの集まり」と名乗っていたなあ。
ブルースを教会に住まわせるのは反対だと言い合っていた近隣住民はめちゃくちゃに怪しかったけど、どうやら違うみたい。
そんな教団の存在により、ポッサム・スプリングスの行方不明者の数は全国平均の8倍って数字くらいだろうと思う。
メイ達は黒いヤギと黒ヤギ教団を、文字通りの歴史の闇へ沈めてしまったというわけ。
メイは黒いヤギに喰われれば楽に死ねるだろう的なことも語ってた。
でもメイはそれを拒み、苦しみながらも生きてくと言った。
私なら同じ答えを出せただろーか。
たぶん私は大人しく黒いヤギのディナーになるね。
掘り出された運命の石を抱いて、それを受け入れて死んでいったと思う。
これで両親や友達の将来は安泰だー、なんつって。
この運命の暗示を拒めたのは、メイの後ろにサイコーのフレンズがいたことはもちろん、メイ自身が反骨精神の塊みたいなヤツだからだと思う。
反発してナンボ、犯罪バンザイ、ポリ公なんかクソ喰らえ。
そんなメイでも精神を病むというんだから、この世で健康に生きていくのがどれだけ大変か!
これを見てナイトインザウッズやろうかなーと思う人がいれば、本当にありがたい事だなあ……1900円を突っ込んで試してみない??